4.「イスラエルはユダヤ人の国」と議決

7月19日、イスラエルのクネセト(国会)は、「ユダヤ民族の国民国家たるイスラエル基本法を議決しました。「イスラエルユダヤ人の国である」というのですね。

イスラエルは、成文法としての「憲法」を持たない国であるとされています。そこで、「基本法」が憲法にあたる上級法になっているようです。現在、「エルサレムイスラエルの首都」とする基本法など12の基本法が定められているようです。そこに新しくこの基本法が加えられました。

イスラエルユダヤ人の国だと以前よりよく言われていましたが、正式に「ユダヤ人の国」だと定められたことは大変重要な意義を持ってきます。イスラエルユダヤ国民民族の国で、ユダヤ人のみが自決権を持ち、ヘブライ語のみを公用語とする(今まで公用語であったアラビア語公用語から外す)としているのですから。

右派政権のリーダーであるネタニヤフ首相にしてみれば、「よし、やったー」と満足の気分でしょうね。今まで長い間、自国をユダヤ人の国と主張し、他国にもイスラエルユダヤ人の国だと認めさせることを悲願としてきた首相は、基本法で明確にイスラエルユダヤ人の国だと位置付けられたことに誇りをも感じていることでしょう。

一方、アラブ側の反発は必至です。イスラエル人口の約2割はアラブ系の住民だといわれます。大規模なデモも発生しました。彼らは「差別され、2級市民扱い」だと批判しています。

この「ユダヤ人の国」の議決が、パレスチナ難民の帰還問題などとも重なり、和平への進展がどうなって行くのか一層分からなくなってきます。

3.トランプ政権の「中東和平案」

中東和平交渉は、長く頓挫したままで進展していませんね。

最近のイスラエルネタニヤフ政権はガタガタしていますし、パレスチナ自治政府もバラバラの状態です。

イスラエルでは11月14日、リーベルマン国防相が辞任し、続いて極右政党「ユダヤの家」の政権離脱検討の動きなどもあり、「総選挙前倒しか」と注目されたこともありました。でも、今のところ総選挙前倒しは避けられ、来年11月に行われる見通しのようです。ネタニヤフ首相としては、自身の汚職疑惑問題もある中、主力政党リクードの立て直しを図り、勢いを取り戻したいとしているようです。

パレスチナでは、相変わらずファタハハマスはいがみ合っています。アッバス議長の求心力は低下してきているといいます。一番心が痛むのはガザの情勢です。

イスラエルパレスチナ双方のこのような国状では、落ち着いて和平の協議もできないのでしょう。          

こうした中、親イスラエルアメリカトランプ政権は、中東和平に向けて新たな動きを見せました。来年の早い時期に「中東和平案を公表する」というのです。この和平案は、ユダヤ教徒でもあるトランプ大統領の娘婿クシュナー大統領特別上級顧問が中心になって策定してきたもののようです。ですからイスラエルにとっては、ある程度「受け入れられる案」になっているのでしょう。逆に、パレスチナアラブ諸国にとっては、「受け入れられない案」なのかもしれません。今のところ案の内容は分かりませんが、6月にクシュナー上級顧問らが中東を訪問し、サウジアラビアのサルマン皇太子やヨルダンのアブドラ国王らとも話し合っていますから、ひょっとするとパレスチナ側も譲歩できそうな案なのかもしれません。一国家案?二国家共存案?それとも第3の新しい案?。どのような案にせよ国境、領土、首都、エルサレムの帰属、パレスチナ難民など難しい問題が山積している状況をどのように把握し、解決しようとしているのでしょうか。この和平案に期待するところ大ですが、不安も付きまといます。

アメリカの努力は評価できますが、各国はもっと国際的な、国連中心の、公平な真の和平を目指す動きをしてほしいものです。

2.パレスチナ難民支援資金が不足?

国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)が、事業資金のやりくりに苦労しているようで心が痛みます。

事業資金の大部分はアメリカはじめ多くの国による拠出金でまかなわれており、今では500万人以上といわれるパレスチナ難民の生活を支えています。その資金の減少でUNRWAは機関の運営に困っているというのです。

アメリカはUNRWA最大の拠出国で、昨年は総額約11億ドル(1220億円)の3分の1ほどの負担をしたとされますが,今年は1月に拠出した6千万ドルを最後に拠出は止まっているとか。アメリカは、UNRWAが「修正不能な欠陥」を抱えている、としてUNRWAの運営に批判的です。そのため拠出をためらっているようですが、どうもイスラエル寄りであるように思えてなりません。

UNRWAは、パレスチナ自治区はじめ、シリア、レバノン、ヨルダンなどで711の小・中学校を運営し、50万人以上の子供たちに教育を提供しているといわれますが、資金難で学校を閉めたこともあったと聞きます。子供たちが可哀そうです。悲しいことですね。

どうもトランプ政権になってから、「アメリカ第一」主義が先に立ち、「国連離れ」が進み、アメリカが国際社会から離れていくように思えてなりません。 

1.在イスラエル大使館の移転

最近、イスラエルに置かれている各国の大使館の移転問題が注目されていますね!

アメリカは、2018年5月14日、在イスラエル大使館を商業都市テルアビブからイスラエルが首都とするエルサレムに移転しました。アラブ諸国は猛烈に反発しています。パレスチナではガザを中心に衝突も起き、多数の死傷者がでています。

クリントン大統領はじめ歴代のアメリカ大統領は、いずれも「問題多し」として大使館移転を見送ってきましたが、親イスラエルトランプ大統領は、エルサレムイスラエルの首都だと認定し、イスラエル建国70周年に当たるこの日に合わせてエルサレムへの移転に踏み切りました。

移転先は、エルサレム旧市街の南方、西エルサレムのアルノナ地区にある領事館の建物ですが、近いうちに新しい大使館の建設を計画しているようです。新大使館の場所や時期はまだ発表されていませんが、国際法上、占領地と位置付けられている「東エルサレム」での建設は避けるようです。また、パレスチナ側は東エルサレムを将来の独立国の首都と主張していますから、新大使館の建設位置は「西エルサレム内」となるのでしょう。大使館の位置が「東エルサレムエルか、西エルサレムか」ということも大きな問題です。

日本はじめ多くの国の大使館はテルアビブに置かれていますが、最近、エルサレムへの移転を計画している国が増えています。グアテマラアメリカが移転した2日後の 5月16に同じようにエルサレムに大使館を移転しました。先日、トランプ政権に追随しているといわれるブラジルの次期大統領ボルソナロ氏も、「大使館をエルサレムに移転する」と表明しました。また、オーストラリアのモリソン首相は、エルサレムイスラエルの首都と認定し、エルサレムへの大使館移転を検討するとしています。その他、パラグアイの動きにも目が離せません。

いずれにしても、エルサレムの首都認定問題やイスラエルでの各国大使館の設置位置問題は、今後の中東和平の進展に深く関係してくることは確かです。これからも注目していきましょう!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ブログの位置づけ

こんにちは! h5556です。
2018年10月に「イスラエルパレスチナに真の和平は実現するか」のブログ(以下「中東和平ブログ」と呼びます)を投稿しました。
「中東和平ブログ」では、「はじめに」のところで触れましたように、私見や憶測を入れずに、既に報道されていることなどを中心に、年表を拡大するような方式で書きました。従って、私の考えや感想は入っておりません。 

これからは、中東和平に関連する事項の中で、私なりにその都度、これは?と気になったものについて(時には私の考えや感想も入れて)、できれば月に2~3回ほど書いてみたいと思います。

ブログの題は「中東和平への動き」とし、それぞれの見出しには順に番号を付けて、あまり長文にならないようにしていくつもりです。初めてのブログですので、どのようになっていくのか少し不安ではありますが、まずは軽い気持ちで始めてみたいと思います。よろしく~